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複数人による交換日記

ピーチジョン

 むかしむかし、あるところに、おじいさんとおばあさんが住んでいました。
 「幸せが刹那的でしかあり得ないものだとしても,慢性的な不安は消し去りたいよ」と言っておじいさんは山へしばかりに、「友達には終わりがこないのだとしたら,私たちがこの関係を選んだのは失敗だったのかしらね」と言っておばあさんは川へせんたくに行きました。
 「共犯関係で落ちていくような恋愛しかしてこなかった報いかしらね」と呟きながらおばあさんが川でせんたくをしていると、ドンブラコ、ドンブラコと、大きな桃が流れてきました。
 「一度も手に入れたことのないものを取り返そうとしているような人生ね」と思いながらおばあさんは大きな桃をひろいあげて、家に持ち帰りました。
 そして、「僕が誰かに思い出された時にだけ光るランプが欲しい」と言い続けているおじいさんと「生まれた時から独身のはずなのに人はいつから『独身』になるのでしょうね」と考えているおばあさんが桃を食べようと桃を切ってみると、なんと中から元気の良い男の赤ちゃんが「見つけられるためにはそこに居ないといけないんだよ」と言って飛び出してきました。
 子どものいなかったおじいさんとおばあさんは、大喜びです。
 桃から生まれた男の子を、「不誠実を日常で濾して飲み続けているけれど,もう限界かもしれない」と思い始めていたおじいさんと「前向きになった途端不慮の事故で死ぬ気がするから前向きになれないのあたし」が口癖だったおばあさんは桃太郎と名付けました。
 「月とか青とか光とか,恋とか夢とか少女とか,そういうつよいことばを使っても,きれいなうたを生みだせる,律儀なひとにあこがれる」と言いながら桃太郎はスクスク育って、やがて強い男の子になりました。
    桃太郎の生きる世界には鬼がいなかったので彼は鬼退治にはいきませんでした。

 

めでたしめでたし

 

おしまい